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届くことのない5のお題
追記から02. 大切だと思っていたあの時
前半マルスの独白・後半レックス君。
追記から02. 大切だと思っていたあの時
前半マルスの独白・後半レックス君。
◆
『アンタは生まれてきちゃいけなかったのよ』
それが唯一覚えている母の言葉。
--
(…嫌な夢をみた)
寝起きは最悪。頭はガンガンするし体はちょっと重い。
どうしても動けなくてもう一度枕にぽすっと頭を沈めた。
(あの御仁…死んでも某の元に現れるか…)
母に未練はなにもない。
なぜなら物心ついたときからつまるところ母の愛というものは知らない。
むしろ家族とは愛で構成されるものとすら知らなかったとおもう。
小さいときの"母"は"痛みを与えてくる自分を産み落とした存在"であったし、
"父"に至っては存在の意味すらわかっていなかった。
母が死んだときに初めて父が自分の前に存在として現れたのだ。
『お前が殺した、お前が俺の大事な妻を殺したんだ!』
痛みを与える存在が消えたというのだから自分がやったのかもしれない。
いや、そうでなかったとしてもそうなるべく自分が存在したのかもしれない。
ならばもう、一族に居るに見合う存在はもうないのだ。
なかった。なくなった。
--
「…少し遅い起きになってしまったか」
広間に出てくるとレックスがカウンターで酒を煽っていた。
「おう、起きたかリーダーさん」
「未成年が酒を飲むな馬鹿者」
「なっ、ちょっと心配して待っててみりゃこりゃねぇよ!!!」
少し鋭い目がこちらを睨んでいる。
「…頼んでおらぬ」
「ちっ、別にアンタのためじゃねぇしな」
ぷい、と向こうを向いてしまった彼の横顔を見やった。
右頬に深い傷が見える。
それは出合ったときからあったと記憶する。
「…丸くなったなおぬしも」
「は?」
「…出会いがしらに某に喧嘩を挑んだ者とは思えぬ」
くす、と笑い、それだけの力があればオヴスクリートに下らずとも生きてゆけるであろう?
とずっと疑問だった言葉をきいてみた。
確かにオヴスクリートに下るように言ったのは自分だ。
だがそれに応じたのは彼。
「…ひつようとされたから」
「…」
「大切なのは、活かすこと…アンタが教えたんだろ、オレに」
そこまでいうと任務にいくといって出て行ってしまった。
当時彼に言った言葉が思い出される。
『殺すには惜しい…その力、某のために使え』
生きる道を見出せなかった自分を大切に生きていたあのころと、
他人を活かそうとし人のために生き人を大切に生きはじめた今をくらべて
おかしくなって少し笑った。
大切だと思っていたあの時
(大切なものが少しずつ変わっていく。)
---------------
マルスは感極まると俺って使います、すごい時々。
つまるところ自分を大切に生きて一族を抜けた昔があるけど、
今は他人を大切にいきてるよ、ということ^^
『アンタは生まれてきちゃいけなかったのよ』
それが唯一覚えている母の言葉。
--
(…嫌な夢をみた)
寝起きは最悪。頭はガンガンするし体はちょっと重い。
どうしても動けなくてもう一度枕にぽすっと頭を沈めた。
(あの御仁…死んでも某の元に現れるか…)
母に未練はなにもない。
なぜなら物心ついたときからつまるところ母の愛というものは知らない。
むしろ家族とは愛で構成されるものとすら知らなかったとおもう。
小さいときの"母"は"痛みを与えてくる自分を産み落とした存在"であったし、
"父"に至っては存在の意味すらわかっていなかった。
母が死んだときに初めて父が自分の前に存在として現れたのだ。
『お前が殺した、お前が俺の大事な妻を殺したんだ!』
痛みを与える存在が消えたというのだから自分がやったのかもしれない。
いや、そうでなかったとしてもそうなるべく自分が存在したのかもしれない。
ならばもう、一族に居るに見合う存在はもうないのだ。
なかった。なくなった。
--
「…少し遅い起きになってしまったか」
広間に出てくるとレックスがカウンターで酒を煽っていた。
「おう、起きたかリーダーさん」
「未成年が酒を飲むな馬鹿者」
「なっ、ちょっと心配して待っててみりゃこりゃねぇよ!!!」
少し鋭い目がこちらを睨んでいる。
「…頼んでおらぬ」
「ちっ、別にアンタのためじゃねぇしな」
ぷい、と向こうを向いてしまった彼の横顔を見やった。
右頬に深い傷が見える。
それは出合ったときからあったと記憶する。
「…丸くなったなおぬしも」
「は?」
「…出会いがしらに某に喧嘩を挑んだ者とは思えぬ」
くす、と笑い、それだけの力があればオヴスクリートに下らずとも生きてゆけるであろう?
とずっと疑問だった言葉をきいてみた。
確かにオヴスクリートに下るように言ったのは自分だ。
だがそれに応じたのは彼。
「…ひつようとされたから」
「…」
「大切なのは、活かすこと…アンタが教えたんだろ、オレに」
そこまでいうと任務にいくといって出て行ってしまった。
当時彼に言った言葉が思い出される。
『殺すには惜しい…その力、某のために使え』
生きる道を見出せなかった自分を大切に生きていたあのころと、
他人を活かそうとし人のために生き人を大切に生きはじめた今をくらべて
おかしくなって少し笑った。
大切だと思っていたあの時
(大切なものが少しずつ変わっていく。)
---------------
マルスは感極まると俺って使います、すごい時々。
つまるところ自分を大切に生きて一族を抜けた昔があるけど、
今は他人を大切にいきてるよ、ということ^^
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